家族が患者になってしまったら?

パニック障害の夫との30年(山ちゃんのパートナーです)

「パニック障害で30年」と言うと、同じ病名を持つ人たちからは、「えっー?!」と驚かれます。主人が発症したとき、心療内科はなく、まだ病名さえわからない時代でした。高校時代からおつき合いをしていて、その後、結婚しましたが、当初は「結婚して環境が変われば、病気も変わるのではないか」と楽観的に考えていました。でも、結婚しても変わりませんでした。子供が生まれると、「これで子供のほうに意識が向いて、心配事がやわらいでよくなるのではないか」とも期待しましたが、そのときも変わりませんでした。それからまさか30年もこの病気に関わるとは思ってもいませんでした。
この病気は、本人にしかわからない感覚、というものがあります。子供に手がかかるのとはまたちがって、大人とはいえ、ほうっておけばダメになってしまうのではないか、どこかでまわりに迷惑をかけてしまうのではないか、と心配になります。ですから、なるべくいっしょにいて、本人が不安にならないで目的地まで行けるように心がけました。途中まで行って具合が悪くなり、帰ってくることもたびたびあり、しんどかった時期もありました。そういうとき、「主人は病気なんだからしょうがない」と自分を納得させてきたものです。
でも、いつも万全の接しかたをしてきたわけではありません。「体の具合が悪い」と言いながらも、健康診断ではなんの異常もないわけですから、下手をすれば私よりも主人のほうが健康体なのです。だから、病気のつらさは本人にしかわからないと踏まえたうえで、どうしても言いたいときにはがまんせず、強くも言っていました。
自分が生まれ育った家族となると、それぞれの家庭もありますら、なかなか万全の協力体制が得られないという現実はどこでも同じだと思います。だからこそ、結婚してできた家族の支えは重要ですよね。それがあってこそ、主人もここまでこれたのだと思います。「オレは結婚できてよかったよ」と言ってくれたとき、こんな悪妻でも感謝してくれていたんだなとうれしく思いました。
自律神経がうまく働かないということは、勝手に働いてくれている神経が働かないわけですから、自分で意識しなくてもダメになってしまうということです。自分でコントロールできないわけですから、本人はとてもしんどいと思います。ですから、まわりの人は気長に合わせる、気長に待つという姿勢で協力してあげてください。ぴったりではなく、ほうっておかない程度の距離感で、ついてあげればいいと思います。